村上春樹の話 『職業としての小説家』

村上春樹の話。

ということでどう始めれば良いのか分かりませんが、ブログ初回での自己紹介でも書いた通り、村上春樹の書くものが好きです。

本の感想文を書くのは苦手で、どうも「面白かったです」「好きな話でした」みたいな文章になってしまうのですが、お気に入りの本の話です。

 

職業としての小説家 (新潮文庫)

職業としての小説家 (新潮文庫)

 

  

まず…自分はどうやって村上春樹の小説に入ったのか。

よく覚えていないのですがおそらく『ノルウェイの森』の映画化云々で盛り上がっている様子をみて、「ここまでベストセラーになる本って…?」「現代日本のベストセラー作家=村上春樹かな?さすがに読んでみたほうが良い?」など思って学生の頃読んだことがきっかけ。『ノルウェイの森』からスタートしました。

そこから長編を少しずつ遡り、短編やエッセイにも手を出し、のめり込み、おそらく作品のほぼ(とにかく数が多いので自信はない)全てを読んできました。

 

小学生ぐらいの頃からなんとなく名前は知っていた村上春樹

ファンが「ハルキスト」(少し意味ありげに)呼ばれたり、ちょっと変わった内容であったり、そして新作が出る度に本屋に人が殺到することも知っていました。

おそらく読者でない方はそう思われているんじゃないでしょうか。

 

確かに熱狂的なファンは多分いますし、登場人物も変わっているし、文体も特徴的ですし…分かります。

正直、私の友人の中でも読んでいる人、そして好きと口にする人、あまり多くありません。実際、これまでに自分と同じぐらい作品を読んできて、同じように話ができた知人も、日本文化が大好きなアイルランド人でした。(フラットに村上春樹の話ができるのって、意外と外国人だったりする気がします)

 

でも色々読んでみると、結構とっつきやすい、親しみやすい人なのです。村上春樹。それを伝えたくって。

「ハルキスト」の呼び名もべつに自称しているわけではなく、村上さんご自身も「自分がそう言うように仕向けたわけではない、なんだか合わないから"村上主義者"のほうがいい」みたいにおっしゃっています。

エッセイやインタビュー集を読めば、全く嫌味のない、タフでユニークな人と分かります。本当はこんな人なんだよ!と言いたいエピソードは山のようにあります。

結構読む方は皆さんおっしゃると思うのですが、長編はもちろん、エッセイがとても面白いんですよね。作家でもアイドルでもなんでも、作品だけでなくそれが生まれた背景であったり、その人のパーソナリティが気になると改めて実感。

 

ぐだぐだと書いてしまいましたが、ここで私のかなり好きな作品について。

 

職業としての小説家

村上春樹著 新潮文庫


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帯にもあるように、「村上春樹の語る『村上春樹』」です。

内容としては、専業作家として生きていくこと、どのように作品を生み出しているのか、海外に出て行くこと、など。

 

いいなと思うところはたくさんあるのですが、私の言葉ではうまく伝えられないので少しだけ文章を抜粋させていただきますね。

 

 これは僕の昔からの持論ですが、世代間に優劣はありません。ある一つの世代が他のひとつの世代より優れている、あるいは劣っているなんてことはまずありません。(略)それぞれの世代間には優劣もなければ、上下もありません。もちろん傾向や方向性においてはそれぞれに差異があるでしょう。しかし質量そのものにはまったく差がありません。あるいはあえて問題にするほどの差はありません。(141ページ)

小説を書こうとしている人に向けて。年齢性別関係なくフラットに接する方だろうなと

 

本を定期的に出版するようになって、ひとつ身にしみて学んだ教訓があります。それは「何をどのように書いたところで、結局はどこかで悪く言われるんだ」ということです。(277ページ) 

誰のために書くのかという話。下に続く

 全員を喜ばせようとしたって、そんなことは現実的に不可能ですし、こっちが空回りして消耗するだけです。それなら開き直って、自分がいちばん楽しめることを、自分が「こうしたい」と思うことを、自分がやりたいようにやっていればいいわけです。(278ページ)

 

文学賞などは毎回騒がれている村上氏ですが、そこに関しても自論が読めますし、世間からの批判に対して考えておられることが分かります。

改めてページをめくってみて、もう毎ページ面白いですね。

もう全て引用したいぐらいなので、小説というもの自体が好きな方にはぜひ読んでいただきたいです。

 

なんというか…好きなものの話をいざ言葉にするとなると本当に難しいです。

言いたいこととしては、お時間がある方はぜひ読んでみてください。(雑)

村上春樹という作家がどんなことを考えているのか、というところに興味がある方におすすめです。少し小説を読んだけどなんだか好かんな…みたいな方にもいいかもしれません。(でもちょっと読んで「合わない」と思った場合、個人的にはわりとすぐに諦めて読むのをやめてしまうタイプですが…)

 

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村上さんのところ」、「やがて哀しき外国語」、「走ることについて語るときに僕の語ること」、「遠い太鼓」、などなど お気に入りのエッセイやインタビュー類、話したいことはたくさんあるのですが、それはまたいつか。

 

 

おしまい

 

 

P.S. ちなみにこれまで一番読み返したのは『ノルウェイの森』、何かに悩んだ時に手に取るのは『村上さんのところ』です